森ビルが創設したアカデミーヒルズで半年ごとに開催されている不動産投資ビジネスセミナーのキックオフ放談会に参加した。不動産投資ビジネスの第一線で活躍している7、8人の講師が一堂に集って、不動産投資市場の現状と見通しについて語る催しで、本音ベースの話を聞けるので重宝している(個別取材すると時間と手間が大変なので…)。
 ただ放談会というぐらいで、結論めいたものを出すわけではなく、毎回、グダグダな感じになってしまうのだが、全体的なトーンは「日本で不動産投資してももう儲からない。やるなら中国など海外に行け!」という内容。予想していた話ではあったが、日本経済の地盤沈下が続いている状況では仕方がないのかも。

 最も印象に残ったのは、Shidaインベストメント&マネジメントの信田直昭氏が「日本の不動産投資市場をよくしようと、誰がリーダーシップを発揮しようとしているのか?」という発言。日本のREITが抱える問題は、他の講師からも「結局のところ利益相反にある」との指摘があったが、それはREITが立ち上がる当初から懸念されていた問題。それにも関わらず10年以上も放置され続けてきたわけで、問題先送りのままで市場低迷が続いているのはまさに日本経済を象徴している。

 他に印象に残った発言を拾ってみると…。
・2008年、2009年と2年連続でオフィスの貸し床面積が減少したのは過去に例がない。バブル崩壊の時でも1年で元に戻っている。
・08、09年に放出されたオフィスの貸し床面積は年25万坪。ほぼ広島や仙台のオフィスが全て空室になったぐらいのインパクト。六本木ヒルズの床面積が5万坪なので、ヒルズ5本分が空室になった計算だ。
・企業は将来の成長を見越して多めにオフィス床を手当てするものだが、最近では意思決定が早くなって必要ないと判断するとすぐに余った床を返してくる。主に会議室などを削ったためか、貸し会議室の稼働率が高まっている。

・日本では土地から買っての不動産開発はもう無理。すでに土地を保有している人にいかにソリューションを提供するかが重要。 ・国際会計基準の影響は大きい。金融庁も企業に収益不動産以外はできるだけ持たないように指導している。企業が保有する不動産は500兆円。出口はファンドやREITになるのだろうが、これをどうビジネスにもっていくか。

・5月17日で報道された不動産投資顧問会社「シンプレクス不動産投資顧問」で、不動産投資ファンドから預かった30億円の資金を管理している公認会計士が着服し、FXに投資して資金回収ができなくなったという事件は、業界にとって大きなインパクト。金融庁から指導が入るなどの直接的な影響はまだ出ていないが…。

 放談会の主席者は、信田氏のほか、ニッセイ基礎研の松村徹上席主任研究員、リチャードシービーエリス総研の前澤威夫専務、東急不動産の小池正晃ソリューション営業本部部長、ビーロッドの宮内誠社長、U.A.P.M. Consulting, LLCの植野正美代表、ユナイテッド不動産の中村政義社長、鈴丈エステートサービスの青木邦啓代表取締役。

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