週刊ダイヤモンド6月5日号にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング=三次元設計システム)の話題を取り上げたら、オートデスクから1日開催の「デザイン・イノベーション・フォーラム2010」の案内メールが届いたので急きょ取材することにした。日建設計、安井建築設計事務所、大成建設で「BIMによる建設革新と将来像」と題したパネルディスカッションを行うというので、どんな発言をするのか興味が湧いたからだ。

 残念ながら「建設革新」というタイトルに相応しい発言はなかったように思うが、「おやっ?」と思ったのが「これからの建築は少量多品種の方向に向かっていくのではないか?」という日建設計設計部門副代表の山梨知彦氏の発言。オフィスビルなどの建築は、競争力を高めるためにBIMを活用して個性的でかつ高性能・高品質のものを作り込んでいくようになるとの見方だ。部材や部品もBIMデータを使ってNC工作機械で加工すれば、プレハブ部品を組み合わせて大量生産する従来の作り方をしなくてもコストを下げられるからのようだ。

 「建築を作る」という範囲でBIMの活用を考えれば、そうした考え方も一理ある。ただ、本当に競争力が必要な建築は、日建設計が手がけるような最先端の限られた建築だけで、大半の建築はよりコストパフォーマンスが高いものを求められるような気もする。BIMが普及すると、超一流といわれる建築家や設計事務所は別として、一般的な建築士や建築事務所は差別化が難しくなって、厳しい価格競争に巻き込まれ、ますます仕事が失われていくことも懸念される。顧客は、設計という行為に対して、建築がもたらす明確なソリューションを求める傾向が一段と強まるのではないかと思っているのだが…。

 大成建設設計本部テクニカルデザイン群グループリーダーの高取昭浩氏の講演「BIMで社内先端テクノロジをつなぎ、顧客サービス向上で差をつけろ!」は、07年9月からBIMの社内導入を開始し、社内に普及・定着を進めている方策や工夫、苦労話を披露した。講演の締めくくりで、「BIMの導入で建設生産が近代化され、科学的になる」という発言には少々驚いた。

 建築は経験工学と言われ、自動車のように全ての部品の性能・品質を厳密に管理できていなかったのは事実だ。そうは言っても、過去には現場ごとに所長権限で部材を調達したり、専門工事会社への材工一式発注だったりという商慣行が続いてきたこともある。今後はBIMデータから直接、部材の受発注を行い、施工管理も行う体制を確立するということなのかもしれないが、果たして下請タタキで散々、苦しめられている専門工事会社が付いてくるか。

 フォーラムの会場では、日経BPのケンプラッツで「イエイリ建設ITラボ」を主宰している家入龍太氏に会った。「ダイヤモンドがBIMを取り上げた」と家入さんがツイッターに書き込んだら、しばらくしてダイヤモンドの記者から私に「家入さんが呟いていましたよ」とのメールが入った。ツイッターって結構、繋がっているものだと実感した。

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