【日誌】事業仕分け第2弾は二匹目のどじょうになるか?―TBSの「朝ズバッ!」でコメントを求められたが…(2010-04-20)

 鳩山政権による事業仕分け第2弾が23日から始るのに先立って、連日、仕分け人たちによる独立行政法人への視察が行われている。19日は、注目のUR都市機構だったらしく、朝に突然、知り合いの出版社の人間から電話があって、TBSの「朝ズバッ!」の担当者が連絡をほしがっているとのこと。まさかとは思ったが、「URの事業仕分けについてコメントを」との依頼だった。夕方、5時にTBSのスタジオに行くと、取材担当の岡安弥生さん(さすがに美人ですね…)とご対面。テレビカメラの前で1時間近くもしゃべらされたが、「結局、ボツになるだろうなあ…」と思いつつ、帰宅した。それにしても、事業仕分けって、何のためにやるんだろうねぇ。前原誠司国土交通大臣は「URを解体的に見直してもらう」と言っているのだが…。

事業仕分けに期待したい気持ちは分かるが…

 発足7か月で内閣支持率が30%を割った鳩山政権にとって、国民から高い評価を得られた数少ない施策が事業仕分けだ。それだけに、独立行政法人を対象とした今回の事業仕分け第2弾にかける期待も大きいのだろう。朝ズバッ!でも、仕分け人たちの視察風景を連日、放送して盛り上げているが、「ちょっと無理があるなあ〜」と思いつつ見ていた。

 第一回目の事業仕分けは、基本的には単年度予算として実施している事業について、必要か、必要でないかを仕分けるだけでよかった。財務省がお膳立てしてくれていたわけで、話題となったスーパーコンピューターの開発プロジェクトにしても、もし取りやめることになっても、その影響は限定的。どうしても必要であれば、民間企業が中心となって研究開発を行うという選択肢もある。

継続事業を仕分けることの難しさ

 しかし、独立行政法人はそうではない。URの場合は、75万戸の賃貸住宅抱えて運営管理を行っており、都市開発でも継続的に取り組んでいる事業主体である。実際に多くの人たちがURの住宅に住んでおり、マンション管理子会社の日本総合住生活から管理サービスを受けている。必要か、必要でないか、と聞かれれば、先の見通しもないのに「必要ない」とは答えられない。

 もし75万戸の賃貸住宅を引き継いで事業を継続してくれる民間会社があるのなら、URの解体を検討しても良いが、そんな意欲がある企業があるだろうか。日本は地価が高すぎるために、もともと土地を所有していて相続税対策などで行う以外は、賃貸事業はそれほど儲かるビジネスではない。新築物件なら引き取る業者もあるだろうが、古い賃貸マンションを引き取ってくれる民間企業があるかどうかははなはだ疑問である(取り壊して、分譲マンション用地として引き取る事業者はいるだろうが…)。

無視できない居住者の意向

 日本総合住生活にしても賃貸と分譲をあわせて100万戸を管理する日本最大のマンション管理会社である。民間最大手の管理戸数は35万戸前後で3倍の開きがあり、解体するにしても、複数の民間管理会社に分割して引き継がせるのか?東急コミュニティなどのように上場させてURグループ系列から独立させるのか?そうした方針を決めるにも、経営状況をキチンと調査する必要がある。

 さらに重要なのは、現在、URの賃貸マンションに住んでいる居住者の意向だ。分譲マンションであれば、管理組合が料金やサービス内容によって日本総合住生活に不満を持っているのなら、他の管理会社を選べば良い話である。賃貸マンションの場合は、事実上の大家である国民によって勝手に管理会社を替えても問題ないのかもしれないが、居住者も管理費を支払っているわけで、勝手に替えるのも乱暴な話だ。

郵政民営化も頓挫したことを考えると…

 そもそも事業仕分けは、事業そのものを否定するための作業ではないはずである。3月上旬に森ビルのアカデミーヒルズで、行政刷新会議事務局長の加藤秀樹氏(構想日本代表)の講演を聴いたが、加藤氏も「事業仕分けは、そもそも政策の中身を決めるものではない」と話していた。公的賃貸住宅を廃止するわけでもないのに、URの解体的見直しを行うのは順序が逆だ。「日本の公的賃貸住宅政策をどうするのか?」を決めるのが先決だろう。

 公的賃貸住宅の運営・管理を、UR以外の民間に移管する(いわゆる施設は官が保有して民が運営するコンセッション方式)という考え方もあるが、行政刷新会議の事業仕分けで簡単に決められる話ではないだろう。これもURの賃貸住宅に住む居住者たちの意向を聞かずに進めることは難しい。

 高齢者には公的機関に対して安心感を持っている人は多い。郵政民営化でも、民営化によって地方を中心にサービス低下を招くことに対する警戒感が強く、結局、日本郵政の株式を国が30%以上は保有し続ける方針が打ち出したのは鳩山政権である。

戦略的な都市づくりは民間だけでできるのか?

 前原大臣が策定を進めている成長戦略では、国際競争に勝ち抜くための都市づくりを進める方針を打ち出そうとしている。都市開発事業について、仕分け人の中からは「URに任せなくても、民間でもできる」という声も出ているようだが、これまで民間だけで大規模な土地の整理を実施して開発できた案件がどれだけあるのかをキチンと調べた上で発言しているのだろうか。

 品川駅周辺や汐留地区の再開発は旧国鉄跡地、六本木の東京ミッドタウンも防衛省跡地の利用である。大規模な都市開発事業用地の多くは、行政側がお膳立てしたあとで、民間が入っていった案件ばかりだ。民間事業者だけで土地を地上げして、大規模な都市開発事業が成功した案件は、アークヒルズ、六本木ヒルズなど、数えるしか思い浮かばない。

 今後、戦略的に都市づくりを進めていくときに、どのような体制で進めていくのか。官と民の役割分担はどうするのか。地籍の半分以上が確定していない日本で、複雑な土地の権利関係の調整を民間だけで行うことができるのか。そうした戦略がまだ何も決まっていない段階で、URの解体的な見直しを行うべきかどうかを聞かれても、困ってしまう。

事業仕分けを契機に、本格的な議論を進めることが重要

 天下り問題にしても、URだけが悪いのではなく、行政機構全体の問題である。公務員制度改革を鳩山政権がどう考えているかであって、事業仕分けの対象になるような話ではないはずだ。

 加藤氏の講演を聞く限り、事業仕分けとはもともと地味な作業だったようだ。民間企業で言えば、社外監査役が行うような仕事と言えるだろう。それを公開して国民に見えるようにしたことは良いことだと思うが、派手なパフォーマンスに利用するのはいかがなものか。スーパーコンピューターの時のように、ノーベル賞学者揃い踏みの派手なパフォーマンスの反対運動が行われて、踏み込んだ本質的な議論を行うチャンスを逃してしまってはならないだろう。

 事業仕分けをキッカケに、公的賃貸住宅の運営・管理のあり方、高齢者向け住宅供給の問題、都市開発事業の進め方などの今後の住宅・都市政策にとって必要な議論を深めていくことが重要だ。その結論として、新しい運営推進体制が決まり、それに合わせてURの解体が必要ならば、そう進めれば良いだけの話である。