【IT】挫折から学んだ人生哲学を実現した「FAQサイト」ナンバーワン企業―オウケイウェイブ・兼元謙任社長(下)(2006-07-07)

 ――兼元社長はデザイナーだったわけですが、最初から起業を考えていたのですか?
 兼元 デザインに対しては野望はあったが、会社を作りたいと考えたことはなかった。まずは「やりたいこと」が先で、起業はそれを実現する過程でしかない。やりたいことが貿易なら、起業するより既存の貿易会社に入ってトップを取る方がやりたいことを実現できるはず。自分の場合は、やりたいことをどの企業でもやってくれなかったので、自分でやるしかなかった

――起業するだけで大変ですし。
兼元 自分の場合は国籍の問題もあって、しんどい思いもしてきた。両親や祖父母の世代は借金もできず、私が最初に指紋押捺を拒否したときも彼らが無理やり応じさせた。日本で生きていくために仕方がないと考えてきたからで、彼らの”やるせない思い”を払拭することが自分のミッションだと思ってきた。その思いは、FAQサイトを世界に広めていこうという活動にも通じている。

 そもそも「儲かりそうだから起業する」というのは大きな間違い。儲かりそうだとその時点で判るなら、誰もがそうと思っているはず。「チーズはどこにいった?」という本があったが、いくらチーズが大きくても多くの人が来れば取り分は小さくなってしまう。そこにチーズがあるかどうかは判らないけれど、それをやることで多くの人が喜んでくれることなら、将来的ひょっとしたらチーズは大きくなるかもしれない。でも、やっぱりチーズはないかもしれない。そのことに、面と向かえるかどうかが起業の本質。今、自分でやっていることも、一般企業の部長・課長クラスの人がやっていることと何ら変わりはないわけで、最近の風潮は起業家を持ち上げすぎているんじゃないの?

――確かにそんな印象はありますね。
兼元 私の会社には、中国人や韓国人も入社したいとやってくる。彼らは「日本人には負けません。給料はいくらでも良いです。寝ずに働いて技能を吸収したい」と言ってくる。「なぜそんなに頑張れるのか?」と聞くと「自分の国はまだ貧しい。アジアでは日本に負けている。日本で働いて将来は国の役に立ちたい」と答える。一方、日本の学生を面接すると、待遇がどうだとか、福利厚生がどうだとかと言う。「何をやりたいのか?」と聞くと「将来は起業したいので、いろいろと勉強したい」と答える。当社のようなベンチャー企業で悠長に勉強されてもらっても困る。「勉強したいなら大企業へ行ってくれ!」と言いたいね。

――ホームレスをやってまで、やりたいことを実現したわけですから。
兼元 当時は仕事先で「臭いから、風呂ぐらい入れよ」と言われたこともあったが、日本には本当の”乞食”はいなくなった。ホームレスで糖尿病になる人もいるぐらい。今の日本は、全てのものが用意されていて、自ら新しく作り出すこともしていない。ヤフーにしてもオールアバウトにしても全部海外から持ってきたものだが、誰もそのことを指摘しない。日本が世界に誇ってきた製造業は、決して海外の物真似ばかりしてきたわけではない。このままでは日本は絶対に中国や韓国に負けてしまうと強い危機感を感じる。

――日本人自身がその危機感が薄い。
兼元 私自身、日本籍に帰化して日本を何とかしたい、日本に根を下ろしたいと考えてきた。かつて坂本竜馬が”日本人”という意識を訴えたが、これからは”世界人”という視点が重要だろう。グローバル化にも、マクドナルドのように全世界同じにするやり方と、日本独自のものが世界に認められて広がっていくやり方があるが、日本が目指すべきは後者。助け合いの気持ちとか、お礼の気持ちとか、日本の文化を広げていくことだと思っている。

――今年6月に名証セントレックスに上場した。起業を目指す人にアドバイスを。
兼元 サイトを立ち上げたばかりで資金繰りに困っていたころ、コミュニティ会員が1000人を超えたので「会員から1人1万円を出資してもらおう」と考えたことがある。周りから「それじゃ経営はできない」と言われて断念した(笑)。ただ「FAQサイトで世界をつないでいきたい」という企業理念と株式上場の考え方は共通する部分があって、起業した当初から、いずれ上場したいとは考えていた。これほど大変だとは思っていなかったが…。

 起業で重要なのは「諦められないモチベーション」を持っているかどうか。起業した当初、「会社なんてやめろ!やめろ!」と迫る出来事が次々に起きてくる。それを乗り越えられないようなら、最初から「起業なんて安易に言うな!」と言いたい。会社で従業員を雇えば、その家族も含めて一時期でもその人たちの人生を預かることになるわけで、責任は重い。その重圧に負けないだけの動機付けが必要だ。

おわり