建築は詰まるところ”ヒト”である。自動車や家電製品のように出来上がった”モノ”を買うわけではない。まだ影も形も出来上がっていないものを注文する。判断する材料は過去の実績などだが、最後は相手が信頼できるかどうか―。そんな建築人をどう見つけ出すかは、建築主にとって頭の痛い問題だ。私自身、建築のセンスがないと思って新聞記者になったぐらいだから、建築そのものを紹介するのは気が引ける。ただ、自分が「信頼している建築人」というのなら別。単なる”エコヒイキ”と言われそうだが、私の知る建築人をブログで紹介してみたい。

大不況のなかも頑張れ!建築人たち

 今、建設業界は大不況の真っ只中にある。2009年4月の新設住宅着工戸数が年換算で80万戸を切ったのは、まさに非常事態と言える。そんな厳しい状況のなかで、私が良く知る建築人を勝手に応援しようというのがコラムの趣旨である。受注ビジネスにとって、名前を多くの人に覚えてもらうのは重要だから、紹介して迷惑ということもないだろう。

 とは言え、経済記者をやってきた自分が知る建築人は限られている。有り体に言えば、母校である東京理科大学理工学部建築学科の初見研究室の関係者が大半だ。その意味では、最初に断ったように、完全なエコヒイキ企画ではあるが、頑張って良い仕事をしたという情報が入ってきたときには、ぜひ建築と一緒にブログで紹介できればと考えている。

恩師、初見学先生のこと

 研究室を主宰する初見学(はつみ・まなぶ)教授(H氏)は、東京大学建築卒、院修了後、清水建設、東大助手を経て、81年に理科大理工学部建築学科の講師に就任して研究室を開設した。専門は都市計画・建築計画。ちなみに東大の同期に宮本洋一清水建設社長、白石達大林組社長がいて、宮本氏とは高校、大学、清水建設まで一緒だったとか。

 H氏のもとには研究室のOB・OGが頻繁に集ってくる。毎年11月にはOB総会が開催され、年2回開催される初見杯ゴルフ大会は40回を数える。H氏の都内自宅の書斎「素蓼居」では集合住宅に関する勉強会もOBらが参加して続いている。これだけ結束の強い研究室も珍しいのではあるまいか。

若手設計コンペで初見研OBが1位、2位に

 初見研究室の卒業生は300人を超え、多士済々の人材を輩出している。私の同期には、歌舞伎舞台を手がける金井大道具社長の金井勇一郎氏がいる。歌舞伎の枠を飛び出し、演出家・蜷川幸雄氏の舞台作りで第13回(2006年)読売演劇大賞最優秀スタッフ賞を受賞した舞台美術家でもある。

 2008年12月にJIA(日本建築家協会)近畿支部が開催した40歳以下の若手建築家を対象とした第1回JIA KINKI U-40設計コンペ(競技会)「六甲山上の展望台」で、最優秀賞を受賞した三分一博志氏、優秀賞(2人)の森清敏氏はともに初見研OBだ。

 同コンペは、バブル崩壊後、実施設計(アイデアだけでなく実際に建物を建てる)コンペが激減して若手建築家の登竜門が少なくなっていることに危機感を強めていたJIAが阪神電鉄の協力を得て実現した。全国から113人の建築家が参加した中で、初見研OBが1位、2位を占めたのだから快挙である。

 日本建築学会が毎年発刊している「作品選集」(その年の優れた建築作品100点を紹介)の2009年版(09年3月発行)に、森氏が手がけた住宅2題が掲載された。以前に在籍していた大成建設建築本部のある幹部も「当社を辞めた後の活躍ぶりは素晴らしい。惜しいことをした」と賞賛する。

NAA(野田建築会)の活性化もめざして

 すでにメディアなどに登場している人たちの紹介はこれぐらいにして、ブログではあまりメディアでは取り上げられていない建築人にスポットを当てたい。私のブログで取り上げても、あまりお役に立てないかもしれないが、東京理科大学理工学部建築学科(千葉県野田市、1967年開設、卒業生約5000人)の同窓会組織「野田建築会(NAA)」の会報部会長を昨年から引き受けることになり、少しでもNAAを活性化したいという思いもある。

 もちろん理科大OBだけを取り上げるわけではない。取材を通じて親しくなった建築人も紹介する。ただ、建築人を紹介する以上は、手がけた建築を実際に見る必要はあるだろう。そのための時間と費用がネックになる可能性はあるが…。

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