ヤフー主催で今年1月に開催された「全国地方公共団体インターネット・シンポジウム」を取材したレポートが、日経BP社の情報サイトに掲載された。公金収納でクレジット決済が解禁される方針が決まったあと、2006年夏ごろに一度、ヤフーを取材したが、1年半が経過して、宮崎県の自動車税納付や福井県のふるさと寄付金制度など着実に浸透してきたようだ。インターネット公売の導入では、自治体税務担当者に積極的に徴税する姿勢が出てきたとの報告が興味深かった。
――詳しくは日経BPnet「ITpro」の記事「インターネット公売/公金収納の現在 」をお読みください。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080319/296548/?ST=govtech

 サラリーマンを辞めて自営業を始めてみると、いかに「納税」という行為に無頓着だったかを思い知らされる。所得税も年金も健康保険料も全部、源泉徴収で会社が天引きして納めるという仕組みになっていれば当然かもしれないが、それが納税意識の低下につながっているのは確かだろう。

 私の実家は長年、零細工務店を営んでいたが、70歳を過ぎた母親から年金記録問題について興味深いエピソードを聞いた。  「中小・零細工務店で働いていて、親方が年金を払ってくれていると思っていたら、実は納めておらず、年金がもらえない人が回りに何人かいた。年金記録問題では、”払っているはずだ”と国に文句を言っている人も多いようだが、自分でキチンと管理していない方も悪い」

 97年のゼネコン危機のあと、ゼネコンによる下請け叩きが激しくなって、専門工事業者の団体幹部から「このままでは年金保険を維持できない」といった悲鳴が聞かれた。その後、社会保険料などが負担できずに職人が解雇されて、一人親方が増加した建設業界の実情を見ると、過去においても社会保険料の納付を巡っていろいろなトラブルがあったと想像される。

 日本では従業員を雇用した企業が税金や社会保険料をキチンと納付する責務があるように思われている。しかし、税金を納めるのは納税者本人であって、企業は単に代行しているに過ぎない。源泉徴収制度にしても、納税貯蓄組合にしても、役所ができるだけ楽に税金を集められるように様々な仕掛けを構築してきただけのこと。原則はやはり、納税者が自ら治めて記録も自ら管理するのが本来のあるべき姿である。

 今回の年金記録問題にしても、社会保険庁などの役所が信用できないであれば、本来のあるべき姿に戻すという議論が起きてもおかしくないはずだ。社会保険料はもちろん税金を含めて源泉徴収制度を廃止する。企業の負担も減るし、納税者の意識も高まるし、一石二鳥である。納税者にとって多少の手間はかかるように思われるが、やってみると大したことはない。今回取材したインターネット収納が簡単に利用できるようになれば、ますます便利になるだろう。

 私も、当初は面倒だと思って税金のいくつかで口座からの自動引き落としを設定してしまった。今ではインターネット収納が利用できるようになったこともあり、自動引き落としにすべきではなかったと後悔している。財務省は昭和26年(1951年)に納税貯蓄組合法を制定し、円滑な納税を促進するために口座自動引き落とし普及などのキャンペーンを長年続けている。しかし、納税者が自ら納付する行為が大事なのだ。

 徴税する側の役所は、できるだけ労力をかけず効率的に集めることで徴税コストを低く抑えることが、国民にとってもメリットがあると主張するだろう。一見、正しいように聞こえるが、役所の方も楽に税金が集められるから、無駄に税金を使うことになってはいないだろうか。

 道路特定財源問題の議論を聞いていても、いつまでも暫定税率が高いままで税金が集まってくるという意識があったから、のんびりと道路整備が進められてきたように思えてならない。すでに高速道路の建設が始まって40年以上、いまだに計画した主要道路網が完成していないというのでは遅すぎる。

 日経BPの記事の中では編集の指示で取り上げなかったが、シンポジウムで基調講演した前鳥取県知事で慶大大学院教授の片山善博氏の次の言葉が印象に残った。  「おカネは苦労して稼いでこそ大切に使う」―地方交付税や補助金ばかりに頼るのではなく、自ら財源を持ち、住民の理解を得ながら徴税してこそ、税金の生きた使い方ができるようになるという意味だと解釈した。

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