インターネット上でも、あまり好ましいことではないでしょうが、まず蔑称(べっしょう)の話から。新聞は、非常に差別用語に敏感です。現在では読者があまり気にも留めないと思われる用語でも自主規制して使わないぐらいですから、私もこんな話題を書いたことはなかったのですが…。

 職業で、別名に「〜屋」という呼称があるものは、外部の人からは「あまり快く思われていない」とか、「蔑まれて見られている」という話を聞いたことがあります。新聞記者だと「ブン屋」(これはいまだに良く使われています)、証券会社の人は「カブ屋」、建設会社の人は「土建屋」といった具合です。

 使い方の具体事例は、こんな感じでしょうか。  「だからカブ屋と土建屋はダメなんだよなあ」―バブルが崩壊し、ゼネコン汚職事件や証券不祥事などが発覚したあと、経団連の要職にあった大物財界人が、私とパーティで立ち話をしていたときに、そんなセリフを吐き捨てました。身から出たサビとは言え、「いまだにそんな言われ方をするのか」と驚いたことを覚えています。

 「〜家」と呼ばれる職業もあります。政治家、法律家、作家、画家、そして建築家。これらの職業は、たまに「政治屋」といった言われ方をするものもありますが、ほとんど「〜屋」とは呼ばれません。一般には「先生」という呼ばれ方をされている職業です。

 最近では、「先生」という商売も、昔ほど尊敬されなくなったという印象もありますが、本人とその取り巻きの方々は違うんでしょうね。某新聞の政治部記者に、代議士秘書とのマージャンにつき合わされたことがありますが、「ウチの先生」を連呼されて、辟易(へきえき)した経験があります。しばらくして、建築事務所に入った大学時代の友人と話していたときに「ウチの先生、最近はあまり図面引かないから…」というフレーズが出てきて、思わず苦笑してしまいました。

 「本来は、発注者に対して設計者と施工者は並列のはずだが、施工者側が設計者を『先生、先生』と祭り上げてきた。その方がカネに絡んでこなくて、仕事がやりやすかったからですよ」―あるゼネコン関係者は、そんな解説をしてくれました。確かに「先生」という商売は、政治家などを除けば、もともと「カネに無頓着」と相場が決まっていた印象があります。

 大手ゼネコンの設計部の人からは、こんな話を聞きました。  「施工途中で、現場から予算が足りないので、発注者に工事費の追加をお願いしてほしいとの依頼があると、なぜ足りたくなったのか理由も知らされずに、設計者が頭を下げにいく。設計者が頭を下げた方が、発注者もまだ聞いてくれるんですよ」。

 90年代に入って、日本でもPM/CMの考え方が徐々に普及し始めてきました。数年前からは、組織系の大手建築設計事務所が相次いでPM/CM子会社を設立するなど積極的に取り組もうとしているようです。

 プロジェクトマネージャー(PMr)の仕事は、建設プロジェクト全体の管理、要は発注者に代わってカネを厳しく管理するということ。設計費用ももちろん、その対象となるわけですが、PMrも建築家に対しては「先生、先生」と接するのでしょうか。私は、そのあたりをまだ取材したことはないので聞いたことがないのですが、これから、建築家とPMrの力関係がどうなっていくのかは、なかなか興味深いところではあります。

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