「建築家って、何をする人なのでしょう?」―ジャーナリストというのも、今ひとつ判りづらい職業ですが、建築家も、よくよく考えてみると、非常に謎に包まれた職業であるような気がしてきます。建築関係者以外の人に冒頭の質問をしたら、最も多い答えは、きっと「建築設計図を書く人」くらいかもしれません。ただ、えらい建築家の先生が実際に図面を引いているなんて、あまり聞いたことがありませんが…。

 そもそも、建築家を論じること自体、今の日本社会において「意味ないじゃ〜ん」(by明石家さんま師匠)と言われかねない状況かもしれません。それを承知で、無謀な試みを6回シリーズで書いてみようと思います。

 まず、最初にお断りすると、建築家を語れるほど、建築家を知っているわけではありません。別に開き直っているわけではなく、経済記者として建設分野で取材活動してきたのですが、建築家(と呼ばれる方)とはほとんど接点がなかったのです。

 取材したことにある名前の通った建築家と言えば、丹下健三氏、磯崎新氏、安藤忠雄氏、黒川紀章氏ぐらい。それでも建設省記者クラブ(現・国土交通省記者クラブ)に所属していた記者では、建築家への取材経験が圧倒的に多かったと思います。

 週刊誌などではいろいろと批判の多い「記者クラブ制度」ですが、情報を発信する側にしてみれば、主要なメディアにいっぺんに接触できる便利な場所でもあります。私は96年6月から2000年12月までの4年半、旧・建設省記者クラブに所属していました。

 ここで、ちょっと、新聞社の内部事情と旧・建設省記者クラブについて解説しましょう。新聞社は、実は非常にセクショナリズムが強い縦割り組織で、政治部、社会部、経済部など部が違えば、同じ新聞社でも交流がないと言われるほどです。また、役所に設置された記者クラブの中には、政府や役所だけの発表を受け付けるところもあります。しかし、旧・建設省記者クラブは、政治部、社会部、経済部のそれぞれの記者が仲良く(?)同居し、役所の発表だけでなく、民間企業の発表、ダム建設反対派の会見まで何でも受け付ける珍しい部類の記者クラブでした。

 ですから、実にさまざまな人たちが出入りしていて、例えば、欠陥住宅問題を追及している弁護士や、公共事業批判を展開している市民団体、地価動向を調査している不動産鑑定士、建設労働者の労組など、あげれば切りがありません。しかし、私が在籍していた4年半の間、記憶している限り記者クラブを訪れた建築家はたった一人。黒川紀章氏だけです(発表内容は、確か旧・ソ連のある共和国の首都整備計画に関するものだったはず)。もちろん、建築家が記者クラブに来なければ、記者が積極的に取材に出向くのが筋ではありますが、そもそも記者クラブと建築家が、ほとんど接触がないのです。

 それでも新聞紙面に、建築家が登場していないわけではありません。それは、もっぱら「文化面」であり、そうでなければ「家庭面」あたりでしょうか。新聞側の勝手な分類で、建築家は、小説家や画家、音楽家と同じ、いわゆる“文化人”というカテゴリーに属していることになるのでしょう。建築家も、そうした扱いに満足している印象です。

 ですが、建築家を単なる文化人と位置付けて良いものなのでしょうか?確かに、画家や音楽家と同じように芸術家としての一面もあるでしょうが、画家や音楽家に比べれば、政治、経済、社会への関わりや責任は圧倒的に大きいはずです。

 最近、小説家出身の政治家が、社会的に注目を集めています。ご存知の石原慎太郎東京都知事と、田中康夫長野県知事です。また、小説家の村上龍氏も、IT(情報技術)革命など経済問題に積極的な発言を展開し始めています。ある意味で、文化的な活動が、政治・経済と切り離せない状況となっているからかもしれません。

 建築家を、21世紀の日本社会の中で、どう位置付けるのか?そろそろ真剣に考えるべき時期に来ていると思うのですが…。

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