週刊東洋経済の1月19日号(1月15日発売)に特集「ゼネコン現場破壊」が掲載された。いかに建設現場が悲惨な状況にあるかを示すとともに、CM(コンストラクションマネージメント)や大和ハウス工業、長谷工コーポレーションなどの事例と対比することで、ゼネコンの一括請負という”ビジネスモデル”が時代遅れになっていることを描いた。果たして建設業はいつまで「ゼネコン」という儲からない”ビジネスモデル”にしがみついているのだろうか?

 今回、東洋経済の企画特集に協力して議論するなかで何度も念を押したのは、ダメになっているのは”建設業”ではなく、「ゼネコン」という”ビジネスモデル”ということだ。単純に大手ゼネコンとCM会社を比べても全く勝負にならないし、CM会社としても建設工事そのものはゼネコンに頼るしかない。CM会社が単純にゼネコンに取って代わる存在のように思われると、読者に誤解を与えることになると心配したからだ。

 特集のカバーストーリーで東洋経済の鈴木記者が書いたように「ゼネコン」はGeneral Contractor(総合的請負人)の略であって、建設会社(Construction Firm)を意味するわけではない。「建設工事を一括で請け負って完成させる」というビジネスモデルを意味する言葉が、建設会社を指すようになった珍しいケースであることを、私は彼らとの議論のなかで何度も強調した。

 その原因となってきたのが、建設業法の第2条だろう。ここでは、建設業の定義として「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう」と明記している。建設業は、法律によってビジネスモデルが規定されている珍しい業種なのだ(裏を返せば、この定義に当てはまらない建設業は法律の適用外ということにもなるが…)。

 このゼネコンというビジネスモデルは、公共工事を発注する分には、実に便利で楽なやり方だから始末が悪い。総額金額さえ決めてしまえば、後はお任せ。公共発注者は、国民の税金を使って工事を発注するだけなので、自分の懐が痛むわけでもない。この一括請負のビジネスモデルの上に、経営事項審査など建設業に関する全ての仕組みが組み立てられてきた。

 東洋経済が発売された翌日に、大手以下30社ぐらいのゼネコンの若手中堅社員が参加する勉強会に、講師として招かれた。東洋経済の記事では、読み物として理論的な解説を書き込むことは出来なかったので、改めてゼネコンという”ビジネスモデル”がなぜ、儲からなくなってしまったのかを解説した。

 結論から言えば、ゼネコンという”ビジネスモデル”は、単に建設工事を請け負うだけであれば、どのように弄くり回しても儲かるビジネスモデルにはならないだろう。大和ハウスや長谷工のような高い付加価値を加えることができれば別だが、それが可能な建設会社は限られる。ゼネコンというビジネスモデルに、全ての建設会社がしがみ付き続けたために、悲惨で深刻な「現場破壊」を引き起こし、建設業全体が衰退の危機に瀕している。

 「儲からなくても、地図に残る仕事ができることに満足して工事を引き受けてしまう」―勉強会のあとの懇親会で、中堅ゼネコン幹部からそんな声を聞いた。現場技術者や職人たちは、ものづくりにやりがいを持って取り組んでいる。それに甘えて「ゼネコン」というビジネスモデルに固執してきた企業経営者や公共発注者たちの責任であり、問題であるだろう。

 建設業は、誰もが重要で必要不可欠な産業だと思っているはずである。問題は「ゼネコン」というビジネスモデルが制度疲労を起こして時代遅れになっているということだ。そのことを明確に認識するところから出発しなければ、建設業の再生はできないのではないだろうか?

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