インターネットで調べると、東京駅の周辺にも数は少ないが、レンタサイクルをやっている店がある。念のために電話で予約を入れ、保証金2000円(返却時に返還)と5時間のレンタル代500円を払って、いざ出発。オフィスビルの多い八重洲口から、まずは日本橋に向かって走り出した。
さすがに土曜日なので、日本橋の有名デパート、高島屋や三越の周辺には人出はあるものの、オフィス街の方に入ると、人通りもぐっと少なくなる。これ幸い(?)と、いい歳をしたオヤジがカメラを片手に、オフィスビルの塀によじ登ったり、キョロキョロしながら神社の敷地に入ったりして、探検気分を味わった。
高速道路の地下化で、日本橋地域を活性化
街を改めて走り回ってみると、これまで気が付かなかった新しい発見がいくつもあった。
東京証券取引所の裏手に、兜神社という小さな神社=写真=があることや、渋沢栄一の銅像がある常盤橋公園の近くの日本橋川に防災船着場=写真=が設置されていること。面白かったのは日本銀行近くの一石橋の脇にあった「迷子しらせ石標」=写真。江戸時代は、日本橋にかけて盛り場で、迷子が出ると町内で責任を持って預かってくれていたらしい。現在でも、小さな子供を連れて飲み歩いたり、パチンコに興じたりして問題を引き起こす大人の話も少なくないが、託児所のような機能があった江戸時代の方が子供にとっても恵まれていたように思える。
すでにビルが林立している都心部で、果たして高速道路を撤去して地下に埋めることなど出来るのだろうか?―そう疑問に思っていたのだが、実際に歩いてみると、確かに高速道路の移設そのものは十分に実現可能と言えそうだ。
しかし、問題はここからである。日本橋川に架かっている高速道路を撤去しただけで、日本橋の周辺地域が活性化するわけではない。高速道路の移設に合わせて、どのようなまちづくりを進め、地域の活性化を実現させるかが重要となる。
提言では、プロジェクトを米国などで広く導入されているPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業として実施すべきとした。国・地方ともに財政事業が厳しい中、公共事業の実施によって地域が受ける恩恵に応じた資金負担を地元・民間側も提供するという手法である。日本再生プロジェクトの場合は、高速道路の撤去に合わせて実施される都市再開発事業によって増大が見込まれる地域の商業活動や不動産事業の収益を、地元・民間企業が高速道路の地下化に必要な4000億―5000億円の費用の一部に投資することになる。つまり、地元・民間側にとっても投資に見合うだけの収益が見込めなければ、PPP事業は成立しないことになる。
交通インフラ中心のまちづくりは限界に
日本橋地区では、日本橋と日本橋川を”レモン”と考えて、それを生かした”レモネード=まち”づくりが進められることになった。昨年9月には韓国ソウル市でも中心部を流れる清渓川の上に通していた高速道路を撤去する再生事業が完成して日本でも話題となったばかり。独デュッセルドルフ市でも道路を地下化して川沿いのプロムナードを整備し、旧市街の景観を保全する形で都市再生事業を成功させたという。日本橋地区のまちづくりでも、いまや高速道路は厄介者扱いである。
これまでの都市では、交通インフラを中心としたまちづくりが進められてきた。その地域の”レモン"が何であるかはほとんど議論されずに、新幹線の駅や高速道路のインターチェンジさえ誘致すれば、その地域が活性化して豊かになると考えられてきた。しかし、交通の便が良くなったことで、むしろ大都市圏への一極集中は加速し、地方都市の中心市街地にはシャッター通りが増えてる結果になってしまったのではないか。いくら駅やインターチェンジがあっても、美味しい”レモネード”がつくられていなければ素通りされるだけである。
「推進か、凍結か」で揺れている滋賀県栗東市での新幹線新駅建設プロジェクトでは、新駅建設地元負担分240億円に対して、建設効果(10年間)6426億円、消費・生産効果(年間)3770億円という数字が示されている。果たして、新幹線の新駅がその地域にとっての”レモン”になるのかどうか。せめて過去に県庁所在地以外の地方都市で新幹線駅が開設したケースを調査し、まちづくりにどのような影響があったかを客観的に分析したデータを住民に示すことだ。地方公共団体は、まちづくりに関する情報やノウハウをもっと積極的に共有していく必要があるだろう。
