大成建設が25日に社長交代を発表、翌26日に業界紙・雑誌向けの記者会見が行われた。4月1日付けで、葉山莞児社長が代表取締役会長に就任し、新社長には建築出身の山内隆司専務が昇格する。これまでの平島治会長―葉山社長体制は、強いリーダーシップを発揮する葉山氏を平島氏がサポートする形で役割分担が上手く機能してきたが、果たして葉山―山内体制はどうか?
 少々古い話を蒸し返すが、大成建設といえば、社内権力抗争が激しい会社として建設業界内では知られてきた。竹中工務店、鹿島など江戸時代から続く同族経営の会社が多い建設会社の中で、明治時代になって設立された大成建設はいち早く同族経営から脱皮したサラリーマン会社。そのためか、社内権力抗争が起こりやすく、90年代前半の佐古会長―里見社長の抗争は社内を2分して熾烈を極めたと聞く。
 
 ゼネコンでは建築、土木、どちらか強い分野の技術出身者が社長に就任するケースが多く、佐古、里見両氏とも建築出身だった。やはり同じ分野では「両雄並び立たず」で、何かと衝突が起こりやすいのかもしれない。抗争を収束するため、里見氏のあとは異例の経理出身、山本社長が誕生。その4年後に建築出身の現会長の平島氏に社長を譲るという経緯を辿ってきた。
 
 2001年のトップ交代は、平島氏の後任に、同じ建築出身の鶴田氏(現・副社長)が有力との見方もっぱらだったが、土木出身の葉山氏が社長に就任。当時、大手5社の中では最も厳しい経営状況にあると言われていた大成建設を攻めの経営で業績を大きく復活させた。平島会長も、その経営手腕に全幅の信頼を置いて、かつてのような抗争が勃発することはなかった。
 
 「社長になるには能力が必要だ。山内君には統率力がある」―会見の席で葉山氏はそう語った。建設業を取り巻く経営環境がますます厳しくなるなかで、山内氏にも強いリーダーシップが期待されているのは間違いない。そのときに重要なのは、トップ2人のリーダーシップが相互干渉しないことなのだろう。
 
 「土木と建築、分野が違うので、良い補完関係にあるのは確か」―会見が終わったあとエレベーターのなかで山内氏に尋ねると、そんな答えが返ってきた。分野が異なり、かつ年齢も10歳違うのは、その当たりを十分に考慮した人選だったのかもしれない。葉山氏は、引き続き日本土木工業協会会長という「業界の顔」として、山内氏は新しい「大成建設の顔」として、それぞれに強いリーダーシップを発揮していくことになりそうだ。

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