「表参道ヒルズ」、「秋葉原クロスフィールド」―今年に入って東京に新しい“街”が相次いでオープンした。表参道ヒルズは日本を代表する建築家の安藤忠雄氏が、秋葉原クロスフィールドも大手ゼネコンの鹿島が設計デザインし、注目の店舗が数多く出店した大型施設ということもあって、オープン直前のプレス内覧会で早速、見せてもらった。
 表参道ヒルズは、建物の高さを表参道の並木の高さに合わせて抑えるために、地下深く掘り下げた珍しい構造の建物である。各店舗が螺旋(らせん)回廊に沿って並び、中央部分に巨大な吹き抜け空間を配置。吹き抜けの下の空間にはイベントなどを開催できるスペースが設けられ、回廊を歩いている人々にイベントの活気や店舗の賑わい振りがダイレクトに伝わりやすく、一体感を演出しやすい造りとなっている。
 秋葉原クロスフィールドは、昨年春にコンベンションホールを設置した秋葉原ダイビルが先行して完成。ヨドバシカメラの大型店舗進出や「つくばエクスプレス」の開通に続いて、大規模なイベントスペースや東京アニメセンター、レストラン街などが配置された「秋葉原UDX」がオープンして本格的に街が動き出した。今後、デザインセンターなどの教育・研究施設が本格的に動き出せば一段と活気が出てくることになるだろう。
◆鍵を握るコンテンツと情報発信
 もともと集客能力のある立地に魅力的な施設をつくれば、人が集まって賑わうのも当然ではある。しかし、立派な施設や有名テナントで集客できるのも最初だけ。いくら東京には人が集まると言っても、六本木、汐留、品川に次々に新しい“街”が誕生して競争が一段と激しくなっており、飽きられてリピーターが減ってしまえば、すぐに集客力は低下してしまうだろう。
 そこで重要になるのが、イベントを次々に開催したり、施設や店舗をリニューアルしたりして、街全体の魅力を高めて活性化を図る「タウンマネジメント」である。2002年9月に丸ビルのオープンで話題を集めた三菱地所が「街ブランド室」(現・街ブランド企画部)という社内組織を作って、丸の内・有楽町地区全体のプロデュースを始めたのが、本格的なタウンマネジメントの最初だ。
 2003年に街開きした「六本木ヒルズ」では、街づくりの段階からイベントスペースや森美術館、社会人教育施設&図書館のアカデミーヒルズなどの施設を配置して積極的なタウンマネジメントを展開してきた。六本木地区には、今年「国立新美術館」がいよいよオープンし、来年春には赤阪から「サントリー美術館」が移転を決めている「東京ミッドタウン」も完成する。
 六本木ヒルズと東京ミッドタウンとは“街”としてはライバル関係にあるが、こと美術の分野では協調関係にある。これまで美術と言えば、上野の森のイメージが強いが、六本木からの情報発信が増えれば増えるほど、相乗効果も期待できるからだ。タウンマネジメントが成功するかどうかの鍵は、ある意味「情報発信」の量にあると言って過言ではない。
◆シャッター通りは解消するには?
 今年の通常国会には、大店立地法、中心市街地活性化法、都市計画法のいわゆる「まちづくり三法」の見直し案が提出された。新聞などのメディアでは、郊外の大規模商業施設の出店規制を大幅に強化する法案として取り上げられたが、本来の狙いは、地方都市などに広がる“シャッター通り”問題を解消して中心市街地の活性化を実現することにある。
 中心市街地活性化法の改正案では、中心市街地活性化に向けた基本理念と、国、地方公共団体、事業者の責務規定を創設するほか、首相を本部長とする中心市街地活性化本部を新たに設置して、中心市街地活性化に向けて自治体などで作成した基本計画を認定する制度も導入する。それによって集中的な支援策を実施しようというわけだ。
 一方で、都市計画法では、広域にわたって都市構造に大きな影響を与える大規模集客施設の立地に関する規制を強化。これまで抜け穴となっていた白地地域にも原則立地不可の規制をかける一方で、用途既成を緩和する新たな地区計画制度の創設や、都道府県も入って行う広域調整手続きの強化、地域の実情に合わせた開発許可制度の見直しなどが盛り込まれた。従来は規制がかかっていない区域は基本的に開発が自由だったものを、今回の見直しでは全ての区域にいったん規制の網をかけた上で、地域で協議・同意すれば規制を外して計画的な開発が行える仕組みへと大きく転換を図ろうというのである。
 果たして“シャッター通り”が甦り、中心市街地を活性化できるのだろうか。高速道路などの交通網が発達した現代社会において、郊外の大規模集客施設を規制したところで中心市街地が再び活性化するとは考えにくい。市町村を超えて広域での調整手続きをスムーズに進めることができるかどうかも未知数である。
 いま、街づくりに求められているのは、立派な施設やきれいな道路を整備することではないだろう。過去を振り返っても、立派な箱モノは作ったものの、魅力的なコンテンツをつくれずに寂れてしまった事例は少なくない。いかに人々を惹きつけるコンテンツをつくり、街から多くの情報を発信し続けることができるか―「タウンマネジメント」の発想こそが必要になっているはずである。
 残念なのは、ICTには地域を活性化するのに有効なツールが徐々に揃ってきているのに、それらが既存の施策のなかで十分に活用されていないことだ。総務省とLASDECが積極的に進めている地域SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)などは、情報発信するだけでなく、地域の合意形成を図るのにも有効に使えるだろう。タウンマネジメントツールとしても、最適であると思うのだが…。

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