東京都港区の前区長、原田敬美氏を中心に設立されたNPO法人「地域と行政を支える技術フォーラム」が、公共調達における事前監査の重要性を訴える啓蒙活動に取り組んでいる。官製談合の防止や予算の適切な執行を確保する観点から、従来の事後監査から今後は事前監査に重点を移すべきとの主張だ。同法人では、11月25日の10時から東京都港区の生涯学習センター(ばるーん)で公共調達における監査のあり方を考えるシンポジウム

を開催する。
 原田氏は、日本初の建築家区長として2000年6月から04年6月までの4年間、港区長を務めた。行財政改革に力を注ぐ一方で、港区での談合疑惑を究明して入札制度改革を推進して大きな成果を挙げてきた。今年9月に出版した著書「私の官民協働まちづくり 東京港区長奮闘記」(学芸出版)で当時の苦労を生々しく書いている。
 
 NPO法人は、区長時代の経験を生かし、技術者の立場からまちづくりや公共調達などで行政を支援していくために立ち上げた。会員は約50人で、文部科学省が所管する国家資格「技術士」に登録している専門技術者が中心となっている。
 
 技術者資格としては、国土交通省が所管する「建築士」や、経済産業省の「情報処理技術者」などが有名で、残念ながら「技術士」はあまり知られていないのが実情だ。しかし、もともとは医師、弁護士、公認会計士、弁理士と並ぶ五大国家資格と位置づけられ、機械、船舶、航空、建設、電気電子など21部門の専門分野で、現在約1万2000人が超難関と言われる国家試験に合格して「技術士」として登録。公共調達分野では技術監査などの役割を担ってきた。
 
 原田氏は、港区長時代に区長が任命する監査委員会を積極的に活用し、区民に対する説明責任を果たすために監査報告書の充実に力を入れてきた。しかし、監査委員会の活動は、自治体ごとに首長の取り組み姿勢によって大きく異なっていると言われる。さらに地方議会で承認された公共調達案件を事前監査することに対して、議会や役所がメンツを盾に抵抗することも多いようだ。
 
 建設工事でも、ITシステム調達においても、事前に実行予算をチェックしてプロジェクトの進捗管理を行うのは当たり前のこと。そうでなければ出来高管理も行うことはできないわけで、技術的な観点から予算の事前監査を行うのはメンツとは関係ない問題のはず。いかに公共調達では”どんぶり勘定”で予算が実行されているかという話である。
 
 10月28日に開催されたNPO法人の定例会合に参加させてもらったが、そのときにこんなエピソードが紹介された。ある地方自治体の監査委員会に事前監査を導入するように働きかけてきたものの、前向きの反応は得られなかった。ところが、官製談合事件が発覚した翌日になって、自治体側からNPO法人に連絡が入り、急きょ事前監査に関する説明を行うことになったという話だ。
 
 そうした具体的な事例を含めて、11月25日のシンポジウムでは、NPO法人理事長の原田氏の基調報告のあと、パネルディスカッションが行われ、NPO法人の技術士会員の尾崎光三氏と橋本義平氏、東京都の元技師の鈴木繁康氏が出席するほか、ジャーナリストの立場から千葉も参加する予定。詳しい問い合わせは、下記のホームページから。

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