【取材日誌】SEATEC2006で見た日本のIT戦略(2006-10-07)

seatec2006 IT・エレクトロニクスの総合展示会「SEATEC JAPAN2006」が、今年も千葉市・幕張メッセで10月3―7日に開催された。メディアなどでスポットが当たるのは、大型液晶&プラズマテレビや新型携帯電話、ロボットなどだが、ユビキタス社会の実現に向けて取り組まれている「ITプロジェクト」展示に注目しながら、会場を回ってみた。

 SEATECを見学したのは、最終日の土曜日の午後。さすがにコンシューマー商品を扱ったブースには黒山の人だかりができており、広い会場をすべて回りきれなかったが、その中で目に付いたITプロジェクトを紹介する。

◆情報大航海プロジェクト
 経済産業省が音頭をとって推進しているITプロジェクトの目玉。経産省の展示コーナー「プラットフォームビジネスアリーナ」の中央部分で、今年7月31日に発足した「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」の参加企業が展示を行っていた。

 入り口のディスプレイには、タレントの眞鍋かをりさんの映像が映し出され、「フランスのプロジェクトの真似でもなく、グーグル対抗でもありません」と説明。次世代ウェブ情報抽出技術を展示していたソフトバンクBBのコーナーの説明員にプロジェクトの意義を聞くと、「検索エンジンがグーグルだけでは情報操作される危険があります。意図的に情報が排除される事態になったら恐ろしい思いませんか」と力説していた。

 とは言え、いくら強力な検索エンジンが開発されても、サービスとして利用されなければ、80年代後半に失敗したあの「シグマプロジェクト」の二の舞である。「シグマみたいにはならないように、との話は内部でも出ています」と、かなり意識はされているようだが、経産省などで「なぜシグマが失敗したのか?」との分析が行われたという話をあまり聞いたことがない。

 気になるのは、最初の3年間は国のプロジェクトとして推進するにしても、それ以降の開発費用と人材確保をどうするのか。グーグルに対抗するには継続して検索エンジンを研究・開発していくことは不可欠だろう。重要なのはプロジェクトの「入口」ではなく「出口」であると思うのだが…。

◆デジタルホーム実証実験事業「アクトビラ」
 経産省のプラットフォームビジネスアリーナの一角にデジタルホーム実証実験事業の成果を示す「テレビポータルゾーン」が設置されていた。SEATEC開催直前に、来年2月1日からのサービス開始が発表され、07年度中に映像配信サービスがスタートする。

 技術的には、松下電器が「Tナビ」の名称でテレビ用のポータルサイトサービスとして開発したものがベースになっている。しかし、松下1社が開発したサービスにライバル他社が相乗りするのはメンツなどもあって難しかったのだろう。そこでメーカー6社の共同出資会社としてサービスを提供するようだが、日本のエレクトロニクスメーカーが共同で取り組んで成功した事例は、残念ながらあまり記憶にない。

 映像配信サービスは、従来からVOD(ビデオ・オン・デマンド)が本命と言われてきた。地上波放送、衛星放送、ケービルテレビ、パソコンテレビなどを通じて様々な映像コンテンツが提供され、ケーブルテレビやパソコンなどでもVODサービスが始まっているが、どのぐらい需要が伸びているのだろうか?

 たまたま近くにフレパー・ネットワークスのブースがあり、そちらの方は派手な演出も手伝って大盛況。今年1月からコンビニなどにメモリーカードに画像をダウンロードできるキヨスク端末を設置して順調に台数を増やしているようだ。

 「誰がどんな映像コンテンツをダウンロードしたのか判らないように、匿名性にこだわった」とか。さて、どちらが消費者に対して説得力があるだろうか。

◆DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)
◆エコーネット(エナジー・コンサヴェーション&ホームケア・ネットワーク)
 異なるメーカーでも相互接続してデジタルコンテンツを楽しめるようにするためのAV系規格が「DLNA」。エアコンや照明器具などの機器をネットワークで結ぶ白物家電系規格が「エコーネット」である。

 DANAは、昨年のSEATECでも共同展示コーナーが設置されて、この1年でDLNA対応製品の数もかなり増えてきたようだ。エコーネットの展示では、外出先からも携帯電話でエアコンを操作できる「三菱エアコン霧ケ峰みまもりサーバー」(今年のネットKADEN大賞優秀賞受賞)が展示されていた。

 ただ、ホームネットワークを構築するには、これらの規格に準拠したAV機器や白物家電製品に全て買い換える必要がある。果たしてホームネットワークを構築するのに買い換えようとする消費者がどれぐらいいるのか?

 消費者が標準規格などを意識しなくても購入したAV機器や家電製品をコンセントに挿したら自動的にホームネットワークを形成してしまうぐらいの環境をメーカー側が整えなければ、本格的な普及は難しいようにも思えるのだが…。

◆UHF帯対応RFID「響プロジェクト」
 1個5円の低価格RFIDを開発するために3年前にスタートした経産省の響プロジェクトも今年7月に終了。その成果が、他のRFIDプロジェクトと並んで展示されていた。

 RFIDも、そろそろ実用化の段階に来ているわけだが、相変わらず「誰がRFIDをつける費用を負担するのか?」との問題が乗り越えられずに、本格普及のシナリオが見えてこない。「まずは自ら、家電製品やパソコンなどにチップを張るところから始める必要はあるでしょうね」(日立ブースの説明員)とは言うものの、家電量販店にも新たな設備投資を求める必要があり、利用者側のメリットがどれぐらい期待できるのかも判りにくい。

 さらに標準規格の問題もある。欧米が推進する「EPCグローバル」なのか、EPC準拠ながら規格として認められなかった「響」か、TRONの坂村健氏が推進する「U-コード」か。コード変換テーブルがあれば問題はないのかもしれないが、どの規格に乗るのか、利用者側が判断に困るようでは本格普及など覚束ないだろう。

 これらの問題を棚上げしても、RFID導入のメリットが期待できるアプリケーションがRFIDの普及の突破口になると考えられ、その最有力候補は以前から医療分野と言われてきた。しかし、「医薬品メーカーは、RFIDの採用に前向きなのだが、厚生労働省がまずは二次元バーコードから普及させようという方針を打ち出している。RFIDに移行するのは時間の問題で、医薬品メーカーも十分に対応可能だと言っているのに、なぜ二次元バーコードなのか?」(日本IBMの説明員)。

 最初からRFIDでは、中小病院が対応できないことを厚労省は危惧してるのかもしれないが、医師・看護師不足、医療事故などの問題が山積みの医療現場の効率化を優先するとの観点から導入を検討しても良いのではないだろうか。