文部科学省が2000年のミレニアムプロジェクトから進めてきた学校のIT環境整備が、今月末で目標期限を迎える。
 昨年12月には小坂憲次文部科学大臣が地方自治体に向けて緊急メッセージを発表、春休みのある3月を強化月間に指定してラストスパートをかけるよう求めてきただけに、昨年9月時点の調査で普及率が50%弱にとどまった校内LAN整備がどこまで進むかが注目だ。06年度も引き続きIT環境の整備が必要となりそうだが、今後はIT環境をいかに学習に役立てていくかに焦点が移っていくとみられる。
 文科省では「教育の情報化」に向けた取り組みとして、パソコン導入(1台当たり児童生徒5.4人)、ブロードバンド接続(ほぼ100%)、校内LAN(同)、教員のITリテラシー(同)の4項目でカッコ内に示す目標を掲げて学校でのIT環境の整備を進めてきた。
 しかし、地方交付税措置が行われなかった東京都や神奈川県の大都市部で整備の遅れが目立っており、3月3日に(財)コンピュータ教育開発センター(CEC)の「Eスクエア・エボリューション成果発表会」で講演した文科省の嶋貫和男初等中等教育局参事官も「現状では目標達成は難しい」と認めざるを得ないのが実情だ。
 なぜ、義務教育である小・中学校において地域によるIT格差が生じてしまったのか。
 その理由のひとつとして「ITが学力向上にどのような効果があるのか」を示す客観的なデータがなく、IT化の必要性に対する認識が地方自治体でバラツキがあったためと指摘されてきた。
 これに対して文科省でも(独)メディア教育開発センターの清水康敬理事長に依頼してITの学習効果を検証する調査研究事業をスタートさせており、4月には一部成果を公表する予定だ。先の中間報告では、「ITによって十分な学習効果が得られるとの結果が示された」(嶋貫参事官)としており、これによって地方自治体に学校のIT化を促していく作戦である。
 学校のIT環境が整えば、次はITをどのように授業に活用していくかである。先に紹介したCECの報告会では、ブロードバンドスクール協会のアドバイザーで、慶応義塾湘南藤沢中・高等部の田邊則彦先生による校内LANの環境を利用した模擬授業が行われた。
 1人1台のパソコンが無線LANでインターネットに接続された教室で、3つぐらいのヒントを出して、それに合致する国名を当てるクイズ形式の社会科学習の様子を実演。教育用インターネット検索エンジンにヒントのキーワードを打ち込んで国を探したり、生徒が興味を持った国をインターネットで調べてヒントを選び出し、クイズを作ってLANを通じて互いに解き合ったりする学習が紹介された。
 (社)日本教育工学振興会(JAPET)が文科省から委託を受けて04年度から3カ年事業で取り組んでいるネットワーク配信コンテンツ活用推進事業の成果報告会も3月9、10日に開催され、コンテンツ活用実践コンテストの発表が行われた。
 同事業は、民間企業が作成した教育用コンテンツを三鷹市教育センターに設置したサーバーに蓄積しネットワーク配信で学校が利用するサービスで、今年2月現在で1141のコンテンツが登録されている。
 今回のコンテストは、これらのコンテンツを使った「わかる授業」を表彰するもので、大賞には京都市教育委員会が学習研究社の動画コンテンツ「消化のなぞ」を使って行った小6理科の授業が選ばれた。
 これらの成果発表を見ても、ITを授業の中でどのように活用していくかという取り組みはまだ始まったばかりである。JAPETのサービスを活用している学校も小中高あわせて700校程度で、ITを使って児童生徒の学力向上に結びつく授業を作り上げていくためには、IT環境の整備に加えて、教員のITスキルの向上や教材開発などの支援が不可欠である。国の支援策も、従来のハード中心から大きく転換していく必要があるだろう。
 「ネットワーク配信を利用する学校も順調に増えているが、サーバーの維持コストをまかなえる2000校には、まだ時間がかかる。当初予定の3か年で国の支援が打ち切られると、事業継続が難しくなる」(森田和夫JAPET常務理事事務局長)。
 教育の情報化を大きく花開かせるためにも、思い切った投資が必要な時期である。

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