小学校・中学校の教育現場におけるIT化で、地方自治体によって格差が生じていることへの危機感が高まっている。
 自民党の情報化教育促進議員連盟(会長・森山真弓衆議院議員)の決議採択などを受けて、今年7月にITベンダー、教育コンテンツ企業などの民間企業に、教育関連団体も加わって「教育情報化推進協議会」(会長・坂元昂・東京工業大学名誉教授)が発足。格差解消に向けた取り組みが本格的にスタートした。
 文部科学省では、学校のIT環境の整備状況について全国調査を毎年度末時点で実施し、7月頃に結果を公表してきた。e-Japan戦略の目標期限である2006年3月末まで残り2年となった今年3月末の調査では、計画達成が厳しい状況であることが明らかに。文科省でも対策に乗り出す一方で、IT戦略本部の評価専門調査会でも9月の弟2次中間報告で評価を実施するなど注目が集まっている。
 今年6月のe-Japan重点計画―2004では、06年3月時点の達成目標として?おおむね全ての公立学校で高速インターネット接続(今年3月末で達成率71.6%)?校内LANの整備で全ての教室がインターネットに接続(37.2%)?教育用PC1台当りの児童生徒5.4人(8.8人)?おおむね全ての公立学校教員がコンピュータを使って指導(60.3%)―などを掲げた。
 この中で順調に計画が進んでいるのは、ブロードバンド接続で、「PC普及台数と教員のIT能力も何とか達成できそうな水準まで来ている」(初等中等教育局参事官付・沓掛誠情報教育調査官)。
 問題は校内LANの整備。まだ普及率が50%未満に止まっており、このままでは目標達成はかなり厳しいと言わざるを得ない状況だ。
 文科省では、学校のIT環境の整備に向けて、これまでも地方交付税措置で地方自治体を支援してきた。しかし、交付税の使い道は自治体の裁量。財政事業が厳しいなかで自治体の裁量に任せた場合、学校のIT化が後回しにされることを心配する声はあったが、その予想が的中してしまった格好だ。さらに、交付税による支援を得られない東京都などの不交付団体で、整備の遅れが顕著となっている。
 公共事業のように直接予算を付けられず、「目標達成のための政策ツールが限られる」状況のなかで、啓蒙普及活動を強力に展開するために設立されたのが、教育情報化推進協議会だ。進ちょくが遅れている地域に重点を置いて、自治体トップや教育委員会などへの働きかけを行っていく。
 「ホームページなどを通じて進ちょく状況の自治体ランキングを公表。まずは格差を認識してもらうことが必要だ」―協議会の事務局である日本教育工学振興会(JAPET)の森田和夫事務局次長はそう考える。公立学校における教育は、日本全国ほぼ同じ水準が確保されている、と国民は認識しているはずで、IT教育だけ自治体によって格差が生じてもよいと考える人は、まずいないからだ。
 文科省は、来年度の概算要求で「e-Japan実現型教育情報化推進事業」(新規1億7400万円)も打ち出した。校内LAN整備の遅れている都道府県(17程度)を公募して、校内LANを整備・管理・運営できる教員などの人材を育成。ヘルプデスクも設置して学校現場を支援したい考えだ。
 IT投資も、民間企業なら競争力アップなどのインセンティブが働くが、学校におけるIT投資の原動力は何か?学校のインフラ整備をほぼ終えた東京都三鷹市でも「パソコンの買い換えなどで、今後も毎年5000万円以上のIT投資が必要となるのは頭の痛い問題だ」(大島克己教育センター所長)という。目標達成に向けてラストスパートをかける一方で、将来に向けてIT投資が継続される仕組みもあわせて検討しておく必要もありそうだ。

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