電子自治体の実現に向けて「あすのまち・三鷹」プロジェクトを推進する三鷹市(東京都)で、「e!スクール」三鷹モデルの実証実験がスタートした。
 政府が推進する「e!プロジェクト」にも位置付けられ、三鷹市としては昨年10月にスタートした医療サービスの実験、今年1月からのマルチペイメントネットワークを使った電子決済の実験に続く第3弾。3月までの年度内にシステム構築を完了し、4月から本格的な運用を開始する予定だ。
 e!スクールのキックオフセレモニーが行われた2月24日はみぞれ交じりのあいにくの天気となったが、会場の三鷹市教育センターには実験に参加する市民モニターを含めて関係者100人近くが集まった。三鷹市教育長などの挨拶のあと、実証実験をサポートするNTTコミュニケーションズのITマネジメントサービス部・中垣清文主査からデモを含めた実験内容の説明が行われた。
 実験の概要は、三鷹市立第三小学校と、同第四中学校の生徒500人、モニター市民100人にノートパソコンを配布。行政機関用の無線LAN端末を含めて合計620台のパソコンを使用する。
 実験を行う小学校、中学校のほか市役所、教育センター、出張所、図書館など7カ所を結ぶギガビットクラスの超高速ネットワークを構築するほか、学校、学区、JR三鷹駅の周辺に超高速無線LANのホットスポットを構築。映像配信やFFVoIP(インターネットを使ったテレビ電話)などを使った教育用コンテンツの実験を行う。
 実験で使用する教育用コンテンツはすでに実用化されているものが中心で、一見すると目新しさがないようにも思える。しかし、ポイントはこれらのコンテンツが「IPv6」の環境で利用される点にある。また、無線LANも今年に入って仕様が標準化されたばかりの「IEEE802.11g」が導入される。
 最先端のインターネット技術の上に、実際のコンテンツを載せて児童や市民モニターに利用してもらうことで、IPv6や11gの実用化に向けた運用面での問題点を探るのが実験の狙いのようだ。
 「実験に参加するのは約1500人。これだけの規模でIPv6のネットワークを構築したのはは世界でも初めてでしょう。直前までトラブル続きで、何とかセレモニー当日に間に合わせることができた」(中垣氏)。小学校や中学校に設置されたデジタルカメラを使って画像配信のデモが何事もなかったように行われていたが、担当者にとっては冷や汗モノだったようだ。
 現在使われているIPv4や無線LANのIEEE802.11bはセキュリティ機能が弱く、教育や医療といったプライバシー情報を多く含むアプリケーションでは利用しずらいといった指摘もある。確かに子どもたちの授業風景の画像が誰にでも見られるような状態では、画像配信に反対する親たちも多いだろう。
 IPv6では暗号化などセキュリティ機能を大幅に強化でき、相手を特定して情報を配信する機能にも優れているという。学校の授業風景などの映像を不登校の子どもや親たちなど特定の人たちだけに限定して配信できるようにするためにもセキュリティ機能が高いネットワークの実用化が鍵を握っている。
 IPv6も技術的には実用化の段階にあると言われるが、実際に一般の人たちや子どもたちが利用してみて使いこなせないようでは実用化段階に入ることは難しい。先生や生徒たちが使ってみてトラブルなどが発生しないかどうか。運用面でセキュリティ機能を十分に使いこなせるかどうか。今回の実証実験を通じてIPv6が実用化に向けて動き出す時期が見えてくる可能性もある。

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