02年度から新・学習指導要領に切り替わり、IT教育が本格化する。普通教室にもパソコンが設置され、校内LANの整備も着々と進んでいる。あとは、これらのインフラをどう教育に生かしていくかだ。
 公立小中高などの教員数は約90万人―。教員が生徒にパソコンを使って授業ができるようにするため、IT研修が急ピッチで進められてきた。
 パソコンを使える教員は、00年3月で66%だったが、01年3月には80%までアップ。パソコンを使って生徒を指導できる教員も、32%から41%までに着実に上昇しており、引き続き比率を高めていく計画だ。
 最後に残るのは教育用コンテンツの整備である。
 「教科書には検定制度と採択制度があるが、わかる授業を実現するために、どのようなコンテンツをどう使うのかはそれぞれの先生の裁量に任されるもので、全てを国が提供すべきではない。国がやるとすれば、その環境作りだと考えている」(文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課・尾崎春樹課長)。
 現実問題として、教育現場の教員の声が、ITベンダーや教材会社などの民間企業に十分に伝わっていないのが実情だ。一方、教員には、どこにどのようなコンテンツがあるのかといった情報が伝わっていない。現場の教員と、コンテンツ開発企業との情報交換がスムーズに行えるような環境づくりが重要だと言える。
 一方で、01年度までのミレニアムプロジェクトでは、ITを活用して具体的にどのような授業スタイルが良いかなどを研究するためのモデルコンテンツ開発事業も進めてきた。02年度概算要求では、これらのモデルコンテンツを全国に普及させるための「デジタルコンテンツの活用高度化事業」を盛り込んでいる。
 これらコンテンツを蓄積し、さまざまな情報を提供する学習情報ポータルサイトを管理運営するのが、教育情報ナショナルセンター(NICER=事務局・国立教育政策研究所)だ。今年8月末にポータルサイトをオープンしたばかりで、これから体制整備が進められる。
 「目標年次は05年度に設定されているが、来年度から学習指導要領も切り替わるわけで、体制整備は早ければ早いに越したことはない。あらゆる機会をとらえて計画の前倒しを図っていく」。
 具体的には、授業の単元別に必要なコンテンツを検索できるようにする。また、コンテンツに対する教員からの感想や要望などを書き込めるようにし、それらをコンテンツ提供者が見られるようにすることでコンテンツの改良・充実につなげていく。
 「米国のアマゾンドットコムのように、書き込みに対して他の教員が参考になったかどうかをチェックさせるような仕組みまで作れれば、公平で中立的な意見を抽出できるだろう」。
 教育用コンテンツを今後広く流通させる上で気になるのは、著作権の問題だ。コンテンツ開発で教員が果たす役割は小さくないし、むしろ教員が積極的に関わることも期待される。
 「必ずしも教員が開発したものだから無料、ベンダーが作ったものは有料だと決まっているわけではない。教員が作ったものでも有料というケースもあるだろう。ただし、教育情報ナショナルセンターで料金徴収はできない。それ以前の段階で料金を徴収するような仕組みを業界あげて考えてもらう必要はある」。
 さらに「教育用コンテンツ開発の隠れた巨人、NHK」(尾崎氏)の動向も気になるところだ。NHKには、膨大な教育用番組の映像ソフトが蓄積されている。従来の教育用番組は、ストーリー性をもって30分とか、1時間の長さで作られているが、これらをバラバラにして、例えば「モンシロチョウの孵化する様子」の1−2分間の映像を、インターネットでダウンロードしてパソコンで見せるといった使い方も、IT活用授業では有効だ。
 これら映像ソフトの利用を含めて教育用コンテンツを開発・流通体制を今後どのように構築していくかは、民間企業も積極的に取り組むべき課題である。

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