「学校におけるインターネット接続環境がブロードバンド化されれば、従来のISDNのような貧弱な環境から“常時接続”が可能になる。それに伴ってさまざまな問題が浮上するため、その対応を図っていくことが重要だ」(文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課・尾崎春樹課長)。
 文部科学省では、ADSLなどの普及でブロードバンド接続環境が充実するなかで、各地域に対してブロードバンドへの切り替えを推進するよう要請している。
「ブロードバンドに切り替えても接続料金は従来と変わらない、むしろ安くなっているケースもあるので、地域の実情に合わせて積極的に対応するよう呼びかけている」。
 その一方で、ブロードバンド化で常時接続が可能になるとさまざまな問題も表面化してくる。
 「学校には基本的にITのスペシャリストはいない。最初に問題となるのが、サーバの管理だろう」(尾崎氏)。
 万一、サーバがダウンして使えないといった事態が発生しないようにサポートする必要もあるし、セキュリティーの確保も重要だ。学校という環境を考えれば、有害・違法情報を排除するフィルタリングも置かざるを得ない。
 しかし、ネットワークの管理を個別に学校で行うのは困難であり、外部のサポート体制が必要になる。具体的には各地域に「地域センター」を設置し、そこにファイアウォールを設けたり、フィルタリングを行ったり、データベースやホームページのサーバを設置して安全で快適な学校のIT活用環境を構築しようというわけだ。
 地域センターには、各地域の教育センターやIT教育に力を入れている専門校などを想定。この地域センターを総務省の補助事業として推進している地域高度情報通信ネットワークに接続し、各学校の校内LANとも結んでWAN(広域ネットワーク)を形成する。
 「WANの構築事業は02年度予算で要求しているが、01年度の補正予算でも要求したい。認められれば、すぐにスタートさせたい」と、意気込む。基本的に地域の公共ネットワークの整備は総務省が行い、文部科学省はそれと連携する形で、教育センターや専門校へのサーバ設置を進めていく。当面の目標としては05年度までには300カ所以上で実施したいという。
 「WANには、学校だけが接続するのではなく、地域にある博物館や図書館といった生涯学習施設とも接続されることが望ましい。それによって教育環境がより開かれたものに発展していく」―ネットワークが、従来の閉鎖的な教育環境を大きく転換させる鍵を握っていると言えるだろう。
 文部科学省では、学校教育分野でのネットワーク環境整備を推進する一方で、地域の生涯学習機能の強化にも力を入れている。
 ミレニアムプロジェクトの目玉施策として01年度いっぱいまで550万人を対象にIT基礎技能講習が実施されてきた。文部科学省でも00年度補正189億円を投じて、公民館など社会教育施設約7000館にパソコン約11万台の設置を展開してきた。
 02年度以降は、図書館のパソコン設置台数の充実を図るほかは、公民館などに設置された11万台のパソコンなどIT環境を有効活用することに力点を移していく考えだ。
 01年度でIT基礎技能講習が終了したあとも、ITスキルの向上をめざすニーズは高いと考えられる。これを支援するため、ボランティアやNPO(非営利組織)を活用してIT施設を使った企画事業を実施できるよう検討する。生涯学習のための施設として活用していくために、すでに構築されている教育情報衛星通信ネットワーク「el-Net(エルネット)」との接続を進めていく。
 現在el-Netでは約50大学が公開講座を提供している。これらのコンテンツ提供を含めて、ITを活用した生涯学習事業のプランニングを、el-Netを通じて支援していくことにしている。

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