自治体総合フェア2006(主催・社団法人日本経営協会、開催期間・7月12−14日)のイベントとして、パネルディスカッション「IT新改革戦略 オンライン申請率50%の達成は可能か」が12日に開催された。
 パネリストには、利用者側の立場として行政情報研究所所長・NPO法人市民と電子自治体ネットワーク代表理事の諸橋昭夫氏、TKC全国会税理士の芦川浩士氏、行政側の立場として総務省自治行政局地域情報政策室課長補佐の前(すすめ)健一氏、那覇市役所経営企画部情報政策課主幹の名嘉元裕氏の4氏が出席して、コーディネーター役を千葉利宏が務めた。
 今年1月に政府はIT新改革戦略を策定し、その中で2010年度にオンライン申請率50%の達成という目標を打ち出した。今回のパネルディスカッションは、この政府目標の実現性にスポットを当てたわけだが、まず最初に利用者の視点から芦川氏と諸橋氏に、ズバリ、その実現可能性を聞いてみた。
 両氏の答えは「現状のままであれば、目標達成は難しい」。地方自治体の立場から名嘉元氏も「このままでは50%の達成は難しいだろう」と率直に認める発言をした。
 諸橋氏がまず指摘したのは、先に総務省が利用促進対象21手続きを決めた「電子自治体オンライン利用促進指針」のなかから、当初対象になると見られていた住民票や戸籍謄本、印鑑証明の交付など6手続きを除外した問題だ。
 すでに銀行のATMのような各種証明書の自動交付機の設置に関する規制緩和は実施済み。今後はJR東京駅や新宿駅など人が集まるところにに設置して利便性を高めることも可能であり、東京、神奈川、千葉、埼玉県などで交付機用の証明書の仕様を統一すれば、住民基本台帳(住基)カードを使った自動交付機も導入できるはず。それなのに、なぜ、促進対象手続きから、住民票などの証明書交付を除外したのか?というわけである。
 住基カードの普及の遅れについても、政府や地方自治体の取り組みの不備を指摘する意見が出された。
 芦川氏は、顧問先の中小・零細企業に対して電子申告100%を実現させてきた。過去2年間、税理士から積極的に企業に働きかけ、環境整備を支援した成果である。しかし、企業経営者に住基カードを取得してもらうにも、自治体の窓口対応で時間がかかったり、公的個人認証を格納できない区民カードを代わりに勧める自治体があったり、本気で住基カードを普及させる体制が整っていないと指摘する。
 住基カードについては、那覇市でも普及しようと、ICカードリーダーライターを2000台購入して、無償で配布することにした。しかし、これまでに配布したのは200台に止まっている現状も報告された。
 しかし、芦川氏は、労働保険などのオンライン申請について、認証局に公的個人認証が認められていないために、顧問先企業への導入を勧められない実態を指摘。「なぜ、役所によって認められる認証局が違うのか」との疑問を呈した。
 電子決済基盤の整備の遅れも指摘された。芦川氏からは、ネット決済サービスの環境整備に、相変わらず消極的な大手銀行の姿勢に対して注文が出された。一方、諸橋氏からも手数料決済には、少額決済への対応が進みだしたクレジット決済の方が有望との見方が出された。
 最後に諸橋氏が、オンライン申請率を引き上げるために解決すべき問題点を9つに整理。住基カードや電子決済のほかに、JAVAのバージョン違いによってパソコンに複数の電子申請のアプリケーションを置けない問題などが示された。促進対象手続きごとにインセンティブなどの促進策を講じるだけでは、オンライン申請率50%の目標達成は難しいことが、今回のパネルディスカッションの議論を通じて明らかになったと言える。

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