横須賀市(神奈川県、人口43万人)が01年10月から運用を開始している電子入札システムを共同利用する地方自治体が広がってきた。
昨年8月に下関市(山口県、25万人)が導入したのに続き、福井市(福井県、25万人)、佐世保市(長崎県、24万人)、松坂市(三重県、12万人)の3市が導入準備を開始。近く横須賀市と同規模の市も共同利用に参加する予定だ。今年7月には埼玉県でも、横須賀方式に近い独自の電子入札システムの開発をNTT東日本に発注しており、自治体関係者の注目を集めている。
 電子入札システムの標準化を推進する国土交通省の思惑とは裏腹に、独自にシステムを導入する地方自治体が後を絶たない。日本建設情報総合センター(JACIC)では、国の直轄工事を対象に運用を開始している「電子入札コアシステム」を昨年7月から自治体向けに提供を開始。今年3月までに静岡県、岐阜県、三重県など11の地方自治体がコアシステムを購入しシステム構築に着手した。コアシステムに対応した民間認証局も拡充され、利用環境は着実に整ってきたように見えるが、コアシステム方式以外の選択が増えているのも事実だ。
 今回、横須賀市のシステム共同利用に参加を決めた3市のうち松坂市は、すでに横須賀市と同じ制限付き一般競争入札(入札参加条件をクリアしている希望業者全員に入札への参加を認める方式で談合防止やコスト削減に効果があると言われる)を導入して独自の入札制度改革を実施済みで、横須賀方式のシステムを導入する基盤は整っていた。しかし、一方で三重県が昨年秋からコアシステム方式による電子入札システム開発に着手していたが、「操作性、零細業者への負担軽減、導入実績などを総合的に判断して横須賀市のシステムを共同利用することにした」(松坂市担当者)という。
 佐世保市でも、建築工事で2億円以上、その他工事で1億円以上を対象に制限付き一般競争入札を導入済みだが、年間800件の工事入札のうち対象は10数件に止まっていた。今回の共同利用をキッカケに対象工事を段階的に増やしたい考えだ。
 3市の中で、最も注目されるのが福井市の対応だ。県庁所在地であると同時に、債務免除ゼネコン熊谷組の地元でもある。制限付き一般競争入札も導入しておらず、入札制度改革もまだこれからだ。市の担当者に今後のスケジュールなどを問い合わせたが、「地元では電子入札システムの導入や入札制度改革について一切に公式発表していないので、現時点では何も話せない」との答え。地元の反響をみながら慎重に対応している様子だ。
 6市でシステムを共同利用することになった横須賀市では、公証・認証サーバーの大幅な機能強化に着手した。「運用責任を果たすため、能力アップを図るとともにシステムを二重化して安全性を高める」(財政部契約課・佐藤清彦課長)のが狙いだ。さらに、工事入札だけでなく、コンサルタントなどの委託契約や物品調達にも対象を広げていく計画だ。
 横須賀市の共同利用以上に衝撃が大きいのは埼玉県だ。コアシステム方式対応の民間認証局を利用せずに、横須賀方式と同様に自前の公証・認証局を設置することを決め、7月に実施された性能発注による電子入札システムの競争入札には、コアシステム方式を採用したNECも参加したが、NTT東日本が落札した。来年4月から稼動するシステムは、現時点でさいたま市、所沢市など県内23市町村(人口比で6割)が共同利用する予定だ。
 都道府県レベルでは、静岡県が市町村と共同利用する電子入札システムをコアシステム方式をベースに開発中で、来年度下期の本稼動をめざしている。埼玉県が独自システム導入を決めたことで、都道府県でも双方のシステムを比較・検討する動きが広がることになりそうだ。

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