国土交通省が直轄公共工事の電子入札を開始して、今年11月でちょうど1年を迎える。この1年間に電子入札の適用工事も順調に拡大しており、2003年度からは早くも約4万件の直轄工事全てで電子入札を適用される予定だ。それと並行して地方自治体でも電子入札を導入する動きが活発化してきた。
 電子入札の導入事例は国土交通省のほかに独自方式のシステムを導入した横須賀市(神奈川県)と、横須賀市と業務提携してASPサービスを活用して導入した下関市(山口県)をBCN紙面でも紹介してきた。このほかに、独自に電子入札システムを開発して運用を開始した岡山県(今年4月)、日本建設情報総合センター(JACIC)が中心となって開発した標準システム「電子入札コアシステム」の最初の導入事例となった岩見沢市(北海道=今年8月)の2件が動き出している。
 ここに来て、地方自治体での電子入札導入の動きが活発化してきた理由は、岩見沢市の事例が示すように電子入札コアシステムが今年7月に正式にリリースされたからだ。電子入札コアシステムの具体的な仕様や利用環境などが明確になったことで、財務システムなど他のシステムとも連携させながら電子調達システム全体を構築できる環境が整ったと言える。
 大阪府では、電子入札コアシステムがリリースされたばかりの今年7月に電子調達システム開発委託(第1期)の業者選定の入札告示を行い、9月にNTT西日本が5130万円で落札してシステム構築作業に入った。10月には、岐阜県、三重県でも開発委託業者を決定し、電子入札コアシステムを組み込んだ電子調達システムの開発がスタートしたところだ。
 電子入札コアシステムの採用によって開発期間の短縮も期待でき、岐阜県では来年3月までには電子入札の運用を開始する。三重県でも03年度第2四半期には運用を開始、電子コアシステムを採用した大阪府や静岡県でも03年度中には稼動する見通し。また、独自方式によるシステム開発を進めてきた東京都でも03年度から運用を始める予定だ。
 JACICが、電子入札コアシステムのリリースにあわせて行ったアンケート調査によると、これまでに電子入札コアシステムの採用を決めた政府機関、公団、地方自治体は74団体。うち都道府県は32団体と、都道府県全体の約7割に達しており、都道府県が先導的役割を果たして電子コアシステムの普及を進めようという国土交通省の作戦は当たっているようだ。
 静岡県では、静岡市をはじめとする県内市町村の9割が参加して「静岡県自治体電子入札推進コンソーシアム」を結成した。今年7月には、地方自治体を結ぶネットワークLG−WANを使った初めての電子入札実証実験を実施。総務省が今年度に募集した「市町村等フロントオフィス業務・バックオフィス業務の共同アウトソーシングに関する調査研究」事業に応募して、今年8月に4000万円の補助金交付が決まったところだ。
 「県内の市で参加していないのは下田市ぐらいで、ほとんどの市町村に参加してもらうことができた。年度内には基本設計を固めて、来年度にはシステム開発をスタートしたい」(静岡県土木部技術管理室・松井活夫主幹)。実証実験では、発注者のいる土木事務所と電子入札システムのある電子入札施設管理センター(e-BISCセンター)との間に、地方自治情報センター(LASDEC)が入ったために、センターでの処理状況を確認しずらかったなどの課題もあった。共同アウトソーシング化は他県でも検討しているものの具体化しているところは少ないだけに、静岡県の事例が成功するかどうかは市町村への電子入札普及に大きく影響することになりそうだ。

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