仙台市青葉区にある国土交通省東北地方整備局で、11月14日、前日の中部地方整備局に次ぐ第二回目の電子入札が開催された。
 庁舎の脇に建てられたプレハブ建ての入札室には、電子認証のICカードシステムが接続されたパソコン一台と、従来からの「入札箱」が並べて置かれていた。部屋の中を見せたあと報道陣はシャットアウトされ、午後2時から電子入札が開始された。
 「いやあ、多少トラブルもありまして…」―。契約課長が入札室から飛び出してきたのは、2時間後の午後4時。思わず「今日の入札は1件だけでしたよね」と、念を押してしまった。
 当日の入札案件は、河川にかかる橋の下部工工事で、中堅ゼネコン11社による公募型指名競争入札。電子入札で応札した企業が7社、紙による入札が4社と、初回だけに紙入札の企業も多かった。第1回目の入札で、予定価格を下回る業者がなかったため、再入札が行われ、これで時間がかかった面もあるが、普段でも良くあるパターンである。
 「こうしたケースでも、従来の紙入札では1時間もあれば足りる」(契約課)。つまり、通常の2倍の時間を要したわけだ。
 前日にネットワークを通じて扇千景国土交通大臣自ら開札した中部地方建設局の電子入札案件は、紙入札による手続きなどを事前に済ませた状態で、扇大臣が開札し、予定価格も下回って一度で落札業者が決定した。扇大臣の開札風景だけを見せられた報道陣にしてみれば、わずか10分間程度で入札が終わった格好となったが、実はそんなにスムーズに行われているわけではなかったのである。
 本番に向けて、各地方整備局では、さまざまなケースを想定して何度もリハーサルを実施してきた。それでも最初の本番で手際が悪い部分を割り引いたとしても、時間がかかりすぎだ。
 なぜ、電子入札になっても、そんなに時間がかかるのか。
 基本的に国土交通省が開発した電子入札システムは、紙でやってきた入札方法をネットに置き換えただけで、手続きなどは従来と全く同じ手順を踏んでおり、手間はほとんど変わっていないからである。
 東北地方整備局の場合、2時に電子、紙、両方の入札を締め切り、まず、紙の方を開札して、これをコンピューターに入力。2時20分に電子入札分を加えて全ての札を一斉に開いた。
 その後、再入札が決定し、再入札になったことを電子メールで7社に通知。相手が通知を受け取ったことを確認し、再入札を送付してもらう時間を1社当たり5分程度見積もって、7社合計で35分。物理的に2回目の入札締め切りは、午後3時ごろに設定した。
 しかし、そこで電子入札参加業者のうち1社のパソコンでトラブルが発生。結局、2回目の入札締め切り時間は3時15分、その開札が3時35分、落札者が決定し、終了したのが、午後4時ちょうどとなったわけである。
 パソコンのトラブルがなかったとしても、1時間半はかかった計算だ。「このままの手続きで入札するのでは、いつまでたっても、紙入札を追い越せないのでは?」−契約課長にそう問い質すと、「そうなりますかなあ」と苦笑い。
 電子入札による業務の効率化とは、単に応札企業の担当者が入札会場に出向かなくても良くなり、交通費が浮くというだけなのか。「年間260億円のコスト削減効果がある」―国土交通省では、電子入札システムの効果をそう試算しているが、その内容を見ると、移動費用の縮減、距離的制限の解消、転記作業の自動化などが列記されているだけで、確かに業務が効率化されて人員削減などの効果があるといった記述はない。
 国土交通省でも、従来の入札制度をネットに置き換える電子入札システムの開発とは別に、電子入札時代に対応した入札制度改革にも取り組んではいる。今月、横須賀市で効果をあげている条件付き一般競争入札制度を一部導入する方針を打ち出したが、建設業者からは猛烈な反発が巻き起こっており、予断を許さない状況だ。

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